世上无难事 只怕有心人 ~東京から北京へ~

東京大学教養学部で国際関係論を学ぶ4年生。2016年9月から2017年6月まで北京大学に交換留学。

公務員の王さんと「認識B」

今日は中国の公務員の方、王さんとお食事をした。

ボク→東大の後輩のJさん→Jさん行きつけのクリニックの看護師さん→王さん、という形で縁がつながり、4人でお食事をさせていただいたのである。食事をしたのは黒竜江料理のお店で、「都会の中の農村」というモチーフで内装された素敵なお店だった。

(ちなみにJさんはそのような縁を拾ってくるのがうまく、地下鉄の中でJさんが偶然知り合ったおじさんと3人で火鍋を食べに行ったこともある。このおじさん、初めて会うのに、昼間なのに、羊肉をドンドン食わせ、ビールと白酒をガンガン飲ませてきた。これが中国流のもてなし方…。)

 

ボクは王さんに会う前、中国の公務員というと
・すごくお堅い
共産党に忠実
・あまり日本に対していいことを言わない

というイメージがあった。しかし王さんはそのイメージとは全然違う人だった。物腰柔らかで、気遣いが行き届き、親日的な、いわゆる「すごくいい人」であった。

彼は南開大学の哲学科を卒業し、天津市政府で、東アジアに関するニュースを集めて分析する仕事についているという。日本のニュースは、共同通信と日経の記事を見ているらしい(彼が日本の国家公務員にあたるのか地方公務員にあたるのかはよくわからない)

ボクたち4人の話は、料理や旅行の話から、日中の公務員や大学入試制度の話、経済や就職の話、歴史の話、そして日中関係の話にまで及んだ。その中でボクが意外に感じた点が以下の3点である。

 

①中国の状況に対しての見方が冷静だったこと
王さんは話の中でこんな内容をしゃべっていた。
・外交に関することは外交部ではなくて全てトップの7人(中央政治局常務委員)が決めている
・中国の実体経済は近年あまり良くない。投資家の動きによって金融バブルが生じており、住宅価格の高騰のせいで市民は困っている。
・農村部と都市部の経済格差が拡大している。農村の暮らしは前より悪くなっている。
・国内で問題があると政府は国外の問題に国民の目をそらす(フィリピンや"釣魚台")
これらの内容、言い方を変えれば政府批判にもなるような内容である。様々な言論規制がある(この規制の実体をボクはまだあまり把握していないが…)中で、このようにバランスの取れた見方を、公務員の方が、日本人の学生に向かって忌憚なくしゃべってくれることに少し驚いた。

②日本に対する関心と理解が深いこと
王さんは東北アジアに関する仕事をしているだけあって、安倍首相の政策や岸田外務大臣の存在、東大の中国研究者に関してよく知っているようだった。日本の公務員試験や大学入試のことについて、興味のある様子でボクたちに質問を投げかけ、「うんうん!」と聞いてくれた。中国語で日本のことを紹介するのはとても楽しかった。

日中関係に対して楽観的な見通しを持っていること
ボクはいま日本の公務員になることを目指している。そんなボクに向かって、王さんは「日中関係は今後どうなると思うか」というストレートな質問を投げかけてきた。ボクは、前向きな返答をしたいと思いつつも、「いろいろ不確定な要素があるからわからない」というような答えしかできなかったのだが、彼は「日中関係は絶対今後よくなる」と何回も念を押すように言った。ボクら日本人を前にして希望をこめて言った面もあると思うのだが、とはいえその言葉の強さに少し面を食らってしまった。

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そんなお食事会のあと、寮に帰ってこんなことを考えた。

「中国人」の「日本人」に対する認識を「認識A」としよう。
「日本人」の「認識A」に対する認識を「認識B」としよう。つまり、日本人が思う「中国人って俺たちのことこんな風に思ってるよな」というその思い込みが「認識B」である。

中国人と話してよくよく感じるのは、この「認識B」が「認識A」と大きく乖離していることが往々にしてあるのではないかということ。意外と中国人って日本のことを冷静に見ていたりする。もちろんボクがこちらで知り合ったのは中国人13億人のうちの偏った数人のサンプルにすぎないから、それを根拠として「認識B」を断罪することはできないし、そもそも「認識B」と「認識A」がズレるのはごく自然なことだと思う。もちろん中国人の側の「認識B」にも同じようなバイアスがかかっていると思う。

それでもこの「認識B」にボクが注目するのは、二国間で国民レベルの相互不信が根強い場合に、「認識B」に注目することが一つの糸口になるのではないかと考えるからだ。「相手は意外と自分たちのことを好意的に思っている」もしくは「相手方にはこちらを嫌いな人もいれば、すごく好きな人もたくさんいる」と「認識B」を改めることで「ではこちらも警戒を解いてみよう」「こちらをすごく好きな人とさらにいい関係を築こう」となるのである。せめて「認識Bと認識Aは異なることが多い」ということを認識するだけでも、プラスの効果があるのではないか…。

…と書いてみたが、文字にすると意外と陳腐になってしまうというか、ありがちで抽象的な理想論に聞こえてしまう。今後のブログでもっと膨らませていきたい。
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王さんは「天津に遊びに来て!」とか「一緒に西安に旅行に行こう!」というお誘いもくれたので、ぜひ何度もお会いしてお話させてもらおうと思う。とてもいい縁に巡り会えたものだった。

来たる北京の寒さとの過酷なる戦いを前にして、戦々恐々とする10月末日だった…。